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「プラットフォームのメーカーが、開発環境をしっか-整えていること」と、「結果が出るまでに何年もかかる」という2点だ。
初期のMacには「ハイパーカード」というオーサリングツールの元祖のような優れたソフトがあり、プログラミング言語を積極的にしてきた。
それほど環境を整えてやっても、なお何回かの世代交代と10年以上もの歳月がかかる。
インテルやMsの幹部が「ソニーはこのアーキテクチャをサポートするエコシステムを構築しなければならない」と批判したように、この仕組みは種をまけば勝手に「生えて」くるものではなく、長期的な取り組みで「作り上げて」いくものだ。
よ-いえばボランティアの善意を信じすぎ、悪く言うと「投げっぱなし」と指摘されても仕方ないエコシステムにより、PS3のゲーム開発は滞ってしまった。
一から社内でツールや環境を整えるか、ないしは外部からツールを買ってくるか。
いずれにせよ資金に余裕のない中小メーカーにとってPS3は敷居の高いハードとなり、慢性的なソフト不足が続くことになったのだ。
「PSシリーズの父」の引退と「ゲーム機」への原点回帰ハード本体の売れ行きも伸び悩み、先進的すぎるアーキテクチャゆえのソフト開発の難しさもあって苦境に置かれていた4月、PS3の転機は何の前触れもなくやってきた。
PSシリーズの生みの親、久多良木健代表取締役会長が「本人の申し出により」退任し、名誉会長に退くというのだ。
初代PSが登場してから10数年もの間、ゲーム業界の顔役として絶賛も鳥声も一身に集めてきた立役者が、ついに舞台から降るその日がきたのだ。
プレステ3はスーパーコンピュータの夢を見た久多良木は「ゲーム機ではない」「安かったかも」など、日本人的とされている謙譲の美徳″とは対極にある言動には事欠かず、やもすると「ごう慢」と見られやすいキャラクターだった。
が、技術という「合理」にあくまでこだわり、ゲーム機を求める市場の「道理」に目もくれない一徹さは、かつて日本の高度成長期を力強く引っ張った「モーレツ社員」、昭和の父親像に近いのではないか。
久多良木に対する憧れも憎しみも、PSシリーズに「結晶」していた新しさ″と、ガンコ親父的な古さ″への共感や反発が混ざっていたのかもしれない。
ともあれ、久多良木の引退とは、PS3が「スーパーコンピュータ」路線から大幅な変更を迫られることにはかならない。
SCEを代表するドライブゲーム『グランツーリスモ』で実在する150種類もの自動車を、メーカーの枠を超えてそろえられたのも、平井が粘-強-ライセンス取得に走り回ったたまものだ。
はるかなマトリックスに旅立とうとする久多良木から去る3月にはヨーロッパにおけるPS3の立ち上げにも働きのあった平井へのバトンタッチ。
あいまいな「スーパーコンピュータ」から地に足のついた「ゲーム機」へのシフトをやり遂げるための、これ以上はない仕事のできる″人選である。
ガンダム″との戦い「要は、平井さん、PS3つてなんですか″と開かれた時に、明確にゲーム機ですよ″と定義できないと売れない、ということ」そのように「ゲーム機への回帰」の抱負を語っていた平井だったが、懐かしの古巣には思った以上の試練が待ち受けていた。
そもそも、当初の六万円を超える高価格は「ハードはハードでビジネスをする」、つまりコンピュータ単体で利益を上げる姿勢を示すことで、従来のゲームビジネス=「ハードの赤字をソフトで埋める」に別れを告げる三行半のはずだった。
すでにPS2が群雄割拠して覇権を争うゲーム機戦争に終止符を打っており、PS3はスーパーコンピュータの夢を見たPS2から王座を譲り受けるだろうと。
「釣った魚″のPS2ユーザーは、当然PS3に乗り換える」といった皮算用が働いていたから、ためらいなく「コンピュータ」の世界にはばたけたわけだ。
しかし、再び「ゲーム機」に里帰りしたPS3の前にそびえ立ったのは、「1年先行して600万台もリードした」という過酷な現実だった。
PS2に1年先行されたXJ.QOXのときとはMsとソニーの攻守が逆転して、今度はPS2を迎え撃ったのである。
しかも、ソニーが任天堂のビジネスモデルを徹底的に研究してPSを成功に導いたように、MsはPSシリーズの「攻略」に余念がなかった。
PSやPS2が圧倒的な市場競争力を持ち、ライバル企業にとっては悪夢″としか言いようがなかった強みは、度重なる値下げに耐えられる、コスト削減を織り込んでいたアーキテクチャにある。
初めの段階からチップサイズを縮小できるよう設計してあるので、年を追うごとにコストダウンの恩恵を受けやすい。
そうした設計をしていないライバル企業は、いつ終わるともしれない消耗戦の泥沼に引きずり込まれていった。
セガも値下げに対抗するたびに傷口を広げていき、もしもCSKの援助がなかったなら「倒れたまま」であろうダメージを負わされた。
それでいて、ソニーは値下げした価格でも利益を上げていたのだから、必勝というよりは「負けない戦い」だったのだ。
初代もしかりで、チップを供給したメーカーがサイズの縮小=コストダウンに消極的だったから、1台売るごとに発生する100ドルもの赤字も相次ぐ値下げのせいで減らず、しだいにダメージは蓄積する方だった。
ただ、Msはセガと違って、赤字に押し潰されないあり余る財力を持っており、「値下げ戦略」の本質を見抜いていた。
おそらくソニーにとって手痛い誤算は4年後へつまり「5年の寿命」を待たず、前倒しして発売に踏み切ったことだろう。
PSシリーズと同じく、「値下げしやすい」ハードである。
Msはチップの縮小設計に協力的なチップメーカーや工場と契約を結び直し、PSのお株を奪ってしまった。
ロボットアニメの古典『機動戦士ガンダム』にたとえるなら、敵のジオン軍(ソニー)が戦争の概念を覆した画期的なモビルスーツ・ザクを調べ尽くして、ついに連邦軍が決戦兵器のガンダムを手にしたようなものだ。
もはや値下げは武器にはならない。
それどこプレステ3はスーパーコンピュータの夢を見たろか、まだコストダウンの難しいPS3の方が一方的にダメージを受けてしまう可能性もある。
11月に発売されたPSSの新モデルが、四万円弱に値下げされながらもPS2との互換性、つまりPS2のゲームソフトを遊べる機能を削ったのは、かつてのライバル企業が陥った「消耗戦のワナ」に自らはまることを避けたかったのだろう。
とりもなおさず、それは「PS2ソフトも高画質で遊べるハード」という逃げ道をなくし、「PS3ソフト専用のハード」として仕切-直し、ゲームのライセンス料で利益を上げる「ゲーム機のビジネスモデル」に立ち返る背水の陣″の宣言でもあった。
「PS2専用ソフト」はマルチプラットフォームの流れに逆行「○○というゲームが遊べるハードは○○だけ」といった独占供給ソフトは、ハードの普及を加速するパワフルな原動力となってきた。
PSが次世代ゲーム機戦争に勝利する上での決定打となったのも、国民的RPGシリーズである『ファイナルファンタジーZ』が任天堂からソニー陣営に移籍した事件である。
いずれPS3専用ソフトがそろいさえすればほかのハードを圧倒するスペックを持つPS3の大勝利は間違いない。
そう信じて雨乞いのように専用ソフトが降ってくるキーワードだ。


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